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設立趣旨と活動概要


設立趣旨


 医薬品は疾病の診断、治療や予防に必要不可欠ですが、使い方を誤れば効果が得られないだけでなく、副作用や生活の質(QOL)低下をもたらします。医薬品を安心して使用し有用性を最大限に引き出すには、医薬品適正使用のための良質のエビデンスを構築し、薬の専門家である薬剤師が他の医療職種や関係者と連携しながら科学的根拠に基づいて薬物療法を実践する必要があります。
 日本医療薬学会の前身である日本病院薬学会は、平成2年6月に(社)日本病院薬剤師会が中心となって設立されました。平成13年1月に名称が「日本医療薬学会」に変更され、平成20年12月に法人化され、「一般社団法人 日本医療薬学会」となりました。日本医療薬学会の目的は、「病院、薬局、製薬企業、薬学教育機関、行政等に携わる個人を会員とし、医療薬学に関する学理及びその応用についての研究発表、知識の交換、会員相互及び内外の関連学会との連携協力等を行うことにより、医療薬学の進歩及び普及を図り、もって我が国の学術文化の発展と国民の福祉の向上に寄与する」ことです。
 本学会の会員数は年々増加し(2022年12月末現在 約14,000名)、その構成も病院・保険薬局の薬剤師、薬系大学教員・学生、製薬企業関係者等多岐にわたっています。年会における一般演題数も847題を超えるなど、名実ともに日本の医療薬学領域を代表する学会に成長しています。


活動概要


 本学会では、「医療薬学」誌の編集・発行、年会の開催、公開シンポジウムの開催、学会賞等の選考・表彰、医療薬学専門薬剤師の認定、がん専門薬剤師の認定、薬物療法専門薬剤師の認定、学術書籍の編集・出版などの事業を行っています。



「医療薬学」誌の編集・発行

 会員による学術研究の成果をまとめた投稿論文を、ピアレビューによる審査を経て採否決定し、採択論文は年12回、「医療薬学」誌に掲載されます。「医療薬学」誌は平成21年12月には電子投稿化され、審査から掲載までの一層の迅速化が図られました。「医療薬学」誌の掲載論文には、一般論文、ノート、ミニレビュー、総説の4種類があります。


1)一般論文:独創的研究によって得られた医療薬学に関する新知見を含むもの
2)ノート:断片的な研究であっても新知見や価値あるデータや症例報告を含むもの
3)ミニレビュー:医療薬学のトピックスに関する著者の研究結果・解説・展望をまとめて評したもの
4)総説:著者の研究実績に基づきその関連領域の研究をまとめ評したもの(編集委員会からの依頼稿に限る)

▶「医療薬学」誌について



年会の開催

 全国の主要都市において年1回(9~11月頃)、週末の3日間を利用して年会を開催しています。年会では、毎回テーマに沿ってシンポジウムやワークショップなどが組まれ、医療薬学領域における最新のトピックが話し合われるなど、医療薬学領域の情報入手に欠かせない場となっています。年会の規模は年々拡大し、第32回年会ではシンポジウム76セッション、一般演題は847題、参加者は約10,200名でした。

▶次回の年会



医療薬学公開シンポジウムの開催

 医療薬学領域関連のテーマに沿ったシンポジウムを年4回、全国各地で開催しています。シンポジウムには会員・非会員を問わず参加でき、会員には生涯教育の機会を提供するとともに、非会員にとっても本学会への関心を高める貴重な機会となっています。

▶医療薬学公開シンポジウム



学会賞等の選考・表彰

種々の表彰制度を設けて表彰対象者を毎年選考し、年会時に表彰しています。

・功績賞:学会の発展・運営に貢献した功績のあった方を表彰します
・振興賞:教育・社会貢献分野等で医療薬学の振興に貢献した方を表彰します
・日本医療薬学会賞:医療薬学分野で極めて優れた研究業績を挙げ、医療薬学の発展に貢献した方を表彰します
・学術賞:医療薬学分野で優れた研究業績を挙げ、医療薬学の発展に貢献した40歳以上の方を表彰します
・奨励賞:医療薬学分野で優れた研究業績を挙げ、将来の活躍が期待される40歳未満の方を表彰します
・医療薬学誌論文賞:会員の研究の推進と奨励を目的として、「医療薬学」誌に掲載された論文の中で、質に優れ、医療薬学分野の向上への貢献が著しいものを選考・表彰します
・JPHCS誌論文賞:会員の研究の推進と奨励を目的として、「JPHCS」誌に掲載された論文の中で、質に優れ、医療薬学分野の向上への貢献が著しいものを選考・表彰します
・Postdoctoral Award:医療薬学分野に関する研究課題に取り組んだ学業活動により学位を取得した本学会会員を対象に、優れた学業研究を修め将来性が期待できる方を表彰します

▶学会賞



医療薬学専門薬剤師の認定

 医療薬学に関する高い水準の知識・技能を備え、自らの臨床経験に基づいた教育・研究活動が実践でき、かつ社会から信頼される薬剤師を養成し、国民の保健・医療・福祉に寄与することを目的とした制度です。医療薬学専門薬剤師に認定されるには、5年以上の薬剤師歴のほか規程に定められた研修を受け、年会や講習会への参加、全国学会等での発表、学術論文の業績等に加え、認定試験(年1回)に合格する必要があります。医療薬学指導薬剤師は他の薬剤師に対する指導的役割を果たし、研究活動についても自ら推進可能な薬剤師として認定されます。

▶医療薬学専門薬剤師制度について



がん専門薬剤師の認定

 平成18年度に(社)日本病院薬剤師会が創設した「がん専門薬剤師制度」は、本学会の一般社団法人化を機に平成21年10月に本学会へ移管されました。平成22年5月には専門薬剤師制度の中で初めて医療法上、専門性のある医療従事者として標榜できるようになりました。
 本制度は、高度化するがん医療の進歩に伴い、薬剤師の専門性を活かしたより良質かつ安全な医療を提供するという社会的要請に応えるため、がん薬物療法等について高度な知識・技術と臨床経験を備える薬剤師を養成し、国民の保健・医療・福祉に貢献することを目的としています。がん専門薬剤師に認定されるには、5年以上の実務経験のほか、認定がん専門薬剤師研修施設における5年以上の研修歴が必要であり、50単位以上の講習会履修、がん患者への薬剤管理指導実績(50症例、3臓器・領域以上のがん種)等を満たしたうえで、がん専門薬剤師試験に合格する必要があります。がん指導薬剤師は、がん領域における薬物療法について深い知識と鍛錬された技術を用いて他の薬剤師に対する指導的役割を果たし、研究活動についても自ら推進可能な薬剤師として認定されます。

▶がん専門薬剤師制度について



薬物療法専門薬剤師の認定

 本学会の薬物療法専門薬剤師認定制度は、広範な領域の薬物療法について薬剤師として一定水準以上の臨床能力を有し、現に医療現場において活躍している薬剤師を「薬物療法専門薬剤師」として認定する目的で、2012年5月に発足しました。併せて、薬物療法専門薬剤師の養成に必要な研修を実施するための「薬物療法専門薬剤師研修施設」ならびに指導者資格である「薬物療法指導薬剤師」を認定しています。
 本制度は、幅広い領域の薬物療法において、高い水準の知識、技術及び臨床能力を駆使して、他の医療従事者と協働して薬物療法を実践することにより、患者に最大限の利益をもたらすことができる信頼される薬剤師を養成し、国民の保健・医療・福祉に貢献することを目的としています。

▶薬物療法専門薬剤師制度について



地域薬学ケア専門薬剤師の認定

 本学会の地域薬学ケア専門薬剤師認定制度は、地域医療に必要となる広範な薬物療法に一定水準以上の実力を有し、現に地域医療・介護等の現場において活躍している薬局薬剤師を「地域薬学ケア専門薬剤師」として認定する目的で、2020年1月に発足しました。さらに、副領域として「がん」の専門性を有する「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」も認定します。併せて、地域薬学ケア専門薬剤師の養成に必要な研修を実施するための「地域薬学ケア専門薬剤師研修施設(基幹施設と連携施設)」ならびに指導者資格である「地域薬学ケア指導薬剤師」を認定しています。
 本制度は、地域包括ケアなどの地域医療・介護における切れ目のない薬学ケアに対応するため、幅広い領域の薬物療法における高度な知識、技能及び臨床能力を備えた信頼される薬剤師を養成し、国民の保健・医療・福祉に寄与することを目的としています。

▶地域薬学ケア専門薬剤師制度について



学術書籍の編集・出版

 医薬品適正使用の実践のための座右の書として、医療薬学フロンティアシリーズ(疾病と薬物治療編1,薬物動態情報と薬物治療編、医薬品情報と薬物治療編、医療制度とマネージメント編、疾病と薬物治療編2)を刊行し、好評を博しました。また平成22年からは薬剤師のための疾患別薬物療法シリーズの刊行を開始し、医療薬学の実践に不可欠な書籍の充実を図っています。

▶出版物・用語集等



海外研修助成事業

 平成18年より毎年5~6月頃に、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年会への参加と米国病院におけるがん薬物療法に関する研修を実施してきました。平成30年度より助成対象を拡大し、海外研修、施設見学、国際学会等での発表を対象に助成を行っています。参加者は募集要項に基づいて応募した方の中から、書類選考を経て決定されます。

▶海外研修助成事業